『かがみのなか』は、恩田陸(文)・樋口佳絵(絵)による怪談えほんシリーズの一作。 誰もが毎日当たり前のように見ている“鏡”に潜む不気味さをテーマに、 「そこにいる“自分”は、本当に自分なのか?」 という心理的な恐怖をじわじわと描き出した作品です。
📖 この絵本との出会い
怪談えほんシリーズを読み進めている中で、息子が「鏡の話、気になる…」と言って手に取ったのがこの『かがみのなか』でした。 表紙の女の子の無表情なのにどこか空虚な雰囲気が、すでに怖さを漂わせています。
読み始めると、鏡に映る“少し違う自分”がテーマで、 息子も私も思わず背筋が伸びるような感覚に。 特に、鏡の中の自分が「いつもと違う動きをする」ように見える場面では、 息子が本気で鏡を振り返って確認するほどでした。 “身近なのに怖い”という、怪談の王道を体験できた一冊です。
📚 こんな場面におすすめ
- 🪞 身近なものが怖くなるタイプの怪談を読みたい時
- 👦 小学生以上の子と“認識の怖さ”を共有したいとき
- 🌙 夜の読書、夏の怪談イベントに最適
- 👨👩👧 大人が読んでも深い余韻を味わえる作品を探している方に
🕯️ 絵本の内容
主人公は、家でも学校でも町でも、毎日のように鏡を見る普通の女の子。 しかしある日、鏡の中の“自分”の笑い方や表情が、少しだけおかしく見え始めます。
・鏡の中の自分が笑っている気がする ・こちらとは違うタイミングで瞬きをした ・表情がわずかにゆがんでいる
最初は気のせいのように見えた違和感が、 ページをめくるほどに濃く、はっきりとした“異常”へと変わっていきます。
鏡の中の世界とこちら側の境界線が曖昧になっていき、 鏡の中の“もうひとりの自分”がこちらへ来たがっている かのような描写も登場。 ついには、読者が「これは危ない」と感じるほどの緊張感が高まります。
ラストは、鏡を見るのが怖くなるような余韻を残し、 “自分自身”への恐怖を喚起する構成となっています。

正直、怪談えほんシリーズの中でもかなり怖い部類だと思います。 題材が“鏡”という身近なものなので、 現実と地続きの怖さが強く、読み終わったあともしばらく気配を感じるほど。
恩田陸さんらしい心理描写の鋭さと、樋口佳絵さんの不安をかき立てる絵が見事にマッチしています。 大人が読んでも感情を揺さぶられる、レベルの高い怪談絵本です。

さいしょはちょっとこわいだけかと思ったけど、 だんだん“え?これ大丈夫!?”ってなる感じがすごかった。 よるに鏡見たくなくなる。でももう一回読みたい。
⭐ 絵本レビュー評価(5段階)
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 怖さ | ★★★★★ | 鏡の“ズレ”の描き方が本気で怖い。 |
| イラスト | ★★★★★ | 無表情の奥にある不気味さが秀逸。 |
| 子どもの反応 | ★★★★☆ | 鏡を見直すほどのインパクト。 |
| テーマ性 | ★★★★★ | “自分”という存在を揺さぶる怪談として完成度が高い。 |
| 親子で読める度 | ★★★☆☆ | 怖さが強いので低学年以下には注意。 |
🔍 まとめ
『かがみのなか』は、ホラー要素だけではなく “自分とは何か” という哲学的な視点も含んだ、怪談えほんの中でも質の高い作品です。 文章の間と絵の余白が、読者の想像力を刺激し、 読み終えたあとも鏡を見るたびに少し考えてしまうような余韻を残します。
夏の読書や怪談イベントにぴったりの、強烈な印象を残す絵本です。
📝 絵本データ
- 書名:かがみのなか
- シリーズ:怪談えほん
- 文:恩田陸
- 絵:樋口佳絵
- 出版社:岩崎書店
- 対象年齢:小学生〜大人
- ジャンル:怪談/心理ホラー


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